ヘンプ(大麻)100%のTシャツを作るということ。

ヘンプ(大麻)100%のTシャツ。数年前より、ずっと作りたいと思っていたものだ。
結論から言うと、やはりヘンプは素晴らしい。いいTシャツができた。

ヘンプコットンのTシャツは割にどこでも手に入れすることができます。
Hemp 55%&Cotton 45%、あるいはHemp 30%、Cotton 70%が一般的な混率。
ただ、ヘンプコットン素材のTシャツは「繊維カス」が多く、(日本製生地といえど)肌触りがどうもに好きになれなかった。

もっというと、どうも【しっくり】こなかったのだ。

ヘンプ(大麻)の魅力の一つに、多用途性があります。衣料品・食料・建材・医療品など、活用できる可能性の範囲が、驚くほど幅広い。なおかつ、それぞれの分野で優れた機能性・汎用性を認められています。
衣料分野においては、最もメジャーな天然素材のコットンと比べると、制菌性・速乾性・繊維が強靭といった特徴をもち、さらには栽培時における環境負荷が小さくて済む。農薬や施肥を減らすことができ、灌漑へのコストが小さいという。
いわゆるエシカル(倫理的)かつサスティナブル(持続可能)な素材なのです。

面白い植物だと思う。ヘンプの潜在力と将来性に惹きつけられているのは、私達だけではないはずです。
これを読んでいるあなたも、きっとそんなヘンプに魅了されていたり、好奇心をくすぐられている人かもしれない。

ただ、繊維・衣料としてのヘンプを真面目に考えると、「化学繊維やコットンの代替になり得るかどうか」が大きなポイントになる。
ヘンプ100%で多種多様な衣類を製造できるのであれば、いつかはコットンにとって変わるかもしれない。木綿(コットン)以前の日本は、大麻を含む麻が最も一般的だったというから、不可能ではないかもしれない。
でも現状ヘンプ100%のTシャツは手に入らない。
最も身近な衣料の一つ「Tシャツ」。そんなTシャツでさえもヘンプのみで作れないのなら、ヘンプという素材は他の繊維素材の代替となりうる、将来性のある素材なのだろうか?と。

では、そもそもどうしてヘンプ100%のTシャツが手に入らないのか?疑問を持っている人が多いと思います。
理由は簡単、ヘンプ100%の編地がほとんど日本に存在しないから。
これは、技術面での問題・製造コストの高さ・需要の少なさが原因です。

実は、Tシャツに使われるような「編み地」を作るのに、ヘンプ100%の糸はあまり適していないというか、技術的に非常に難しいのです。
コットンなどと比べると、糸が硬めで、切れやすい。これが原因で編み不良が発生すれば生産性は下がります。生産性が下がれば、工場の採算が合わなくなるか、生地の値段が高くなるかのどちらか。また、コストの掛かる良質なヘンプ糸を手に入れる必要もあります。まだまだ一般的には需要の少ない素材です。高コスト低需要な商品です。生地屋やニット製造業者が自らヘンプの編地を作ることはほとんど有り得ないのです。

そうなると、アパレルブランドなどが特注でオーダーする場合以外で、ヘンプ100%の編地を作ることはそもそも難しくなります。
上記でも書いたように、高コストな素材のため、ヘンプに対して実直なブランドでなければ、わざわざヘンプ100%Tシャツは作らないとも言えるかもしれません。

現状、ほとんど誰もヘンプ100%のTシャツに挑戦していないのなら、Ruderalsで作ってやろう。
自分たちのためだけでなく、ヘンプ100%のTシャツを心より求めてる人にも着てもらいたいから。
ヘンプが比類なき最高の素材だと思うから、ヘンプ100%にこそ意味があると考え、作ることにしました。

Hemp(大麻) 100%のTシャツを考える。

今回作ったヘンプ100%のTシャツは、ヘビーオンス(7Oz)の生地を使用。
オールドスタイルのベーシックなデザインです。
品番 「T247HE001」
Black・White
6サイズ展開。
Tシャツ完成まで、着心地、見た目、素材感と悩む点が多かったのが正直なところ。
今回のヘンプ100%Tシャツのこだわりや特徴について説明したいと思います。

ヘンプのTシャツの生地については、麻素材(リネン・ラミー)100%ニットなどと同様に、編地の詰め方・細かさに限度があるため、多少の透け感はつきもの。その透け感を最小限に抑えつつ、重くなり過ぎず、肌触りにこだわった生地の厚さ(ヘビーウェイト)を選びました。
(とはいいつつ、ホワイトはやっぱり透け感強めです。)
リネンやラミーとも違う、ヘンプ100%ならではの独特な光沢感・質感・滑らかさが特徴です。

編地の組織は、いわゆる単糸天竺です。ヴィンテージのTシャツなどに見られる「単糸」のため、繰り返しの洗濯により多少の斜行が起きます。また、縫製前に予めプレシュリンク(生地を洗い適正に縮める)を行なっていますが、縦 約7%、横 約4%ほど、伸び縮みの差があります。そのため、洗濯後のタンブラー乾燥は基本的に厳禁です。とんでもなく縮んでしまうだけでなく、生地の痛みも早くなります。
万が一、タンブラー乾燥を行なってしまった場合でも、縦に引っ張るか、再度洗濯し干せば伸びます。単糸天竺の特徴です。

一般的な衣料品と比べると、特異な点であります。ご理解を頂きたい。

また、麻素材全般に見られる「ネップ(糸の節)」はやはり所々にあります。繊維が太めになっている部分のことです。ただし、「繊維カス」ではないので、肌に不快感は与えません。質の良いヘンプ100%糸ですので、この辺は問題無いです。
また、稀にネップが毛玉風になっていることもあります。うまく取ることもできますが、失敗すると生地を痛めることになり、穴あきなどの原因になり得ます。あまり無理して引っ張ったりしないでください。

ヘンプ100%のTシャツの個性と思って、愛でていただけると幸いです。

首周りの襟部分には、ボディ部分と同じ生地を使用。
リブ生地を作ることも考えましたが、生地の重さなどの特性を考慮して、伸び幅の大きいリブ生地の使用は控えました。同じ天竺を使用することで、首元の伸び縮みが少なく、着古しても首元が伸びることはありません。
襟元の仕様は、いわゆるバインダーネックです。通常、表面のみ折り込み、肌に当たる内側は切れっぱなしで縫製するのが一般的ですが、切れっぱなし部分を一回折り込み縫製することで、肌触りの良い仕上がりになっています。

縫製糸は、今回はポリエステルにしました。生地の伸縮率が大きいことが理由の一つ。
そしてこの「T247HE001」の品番の通り、24時間7日間、毎日洗濯しを繰り返し使ってもらいたいという想いと、それに耐えうる強度を考慮しました。最後まで悩んだ点の一つです。

Hemp(大麻) 100%のTシャツを着る。

試行錯誤して完成したヘンプ100%Tシャツです。
なるべく、扱いやすく、長く着られるように、そんな想いを具体化しました。必ずしも、すべての人の要望に答えられるものではないかもしれませんが。

月並みな表現ですが、「心地がよい」Tシャツです。毎日着たい、と思えるものになりました。毎日着ています。

サラッとした中にも、ふんわりと包まれるような、肌に吸い付くような感覚。
こればっかりは、ヘンプ100%Tシャツを着た人にしか分からない、かもしれません。

ヘンプの可能性に魅了されているあなたも、ヘンプ100%のTシャツを探していたあなたも、是非とも袖を通していただきたいTシャツです。

Ruderals
Hemp 100% T-Shirts
-T247HE001-